暗号資産税金でのタブー2つ!

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個人が儲けてしまった暗号資産(仮想通貨)の確定申告するときに、誰もが考えてしまいそうなタブーについて考察します。

暗号資産を事業所得にしたいんだけど・・・

できるかもよ!

暗号資産を事業所得で税金申告する?

暗号資産の所得は、原則として雑所得になります。

雑所得というのは、10種類に分けられた所得の中で、その他のその他に分類される、ホントに何の種類の所得に区分していいかわからないものを入れるところです(所得税法35条)。

これを事業所得として申告してもいいのかということが問題になります。

結論から言えば、「できます」。

しかし、そう申告すると税務署はかなりの高確率で税務調査に入ります。

雑所得のドツボ

雑所得のツボ

  1. 損失が繰り越しできない
  2. 損益通算の足し算ができません
  3. 雑所得の経費は、その所得に直接必要だった金額のみです

雑所得は本来の仕事ではなく、「たまたま儲かっちゃった」というような、偶然的に儲かってしまった所得という扱いがされます。

暗号資産の利益は、どけだけ計算高く自身の知能をフル動員して稼いだ利益であったとしても「たまたま拾ったお金」と同様に扱われてしまいます。

だから、「そんなものに頼るな、お上によこせ、お上様がビンボー人に分配してやる」という意味が込められています。これが雑所得の宿命です。

【ダメⅠ】損失が繰り越しできない

「今年は損した、でも来年は利益が出る」ようなケースを考えます。 損失が繰り越せる場合、来年の利益から今年の損失を引いて、来年の利益分の税金を安くすることが可能です。

ところが、雑所得の場合これができません。この点が株式の損失と違うところです。 要するに、暗号資産の場合は、税金を安くするために現在の損失を有益に活用できません。

【ダメⅡ】損益通算できない

損益通算の具体例を見てみます。 「給料が500万円だったけど、ほかの所得で100万円の損失が出ているよ」 このような場合、500-100=400万円について税金がかかります。 この100万円の損失部分が、もし暗号資産(雑所得)であった場合は、このような税金の計算にはならず、素の500万円に対して税金がかかります。

【ダメⅢ】雑所得の経費は限定的

普通の事業所得の場合は、交際費やら接待費やら、いろいろ名目をつけて節税が可能です。 しかし、雑所得扱いされる暗号資産はこれができません。暗号資産の情報を少しでも得ようと、暗号資産開発者を接待したパーティーを催して親交を深めたというような場合でも、接待費などにはなりません。幅広い経費が認められている事業所得とは別次元の狭さになるのが雑所得です。

暗号資産で認められる経費

  1. 暗号資産の売買手数料
  2. 暗号資産の入出金にかかる手数料
  3. 暗号資産の関連書籍の購入費
  4. 暗号資産関連セミナーの参加費

正直なところ、儲けていれば経費で落とそうが自腹を切ろうが、変わりないような部分ですね。

だから、雑所得ではなく、事業所得でやりたいんだけど・・・

雑所得と事業所得の境界はあいまいです。 ということは、何とか工夫すれば「雑所得」扱いから逃れて「事業所得」に格上げできるかもしれません。

事業所得にすることのメリット

事業所得のメリット

  1. 青色申告特別控除
  2. 損益通算の足し算ができる
  3. 損失は3年間繰り越せる

事業所得の場合、青色申告特別控除1で最大65万円まで落とすことができます。 事業扱いなので、暗号資産で赤字になったときは、自分が経営している会社の給料から赤字分を引き算して、本当に儲かった部分に税金がかかるように調整できます。

また、損失は3年間繰り越せるので、来年儲けすぎても今年の損失分を引き算して、残りの儲け部分に税金をかけることができます(損した部分には税金はかからない)。 さらに、何が経費として認められるかについても、雑所得よりは広くなります。

暗号資産を事業所得として認めてもらうには?

暗号資産を事業所得として認めてもらうには、高いハードルがあります。

事業所得として認めてもらうには

  1. 専業投資家であること
  2. 取引規模が事業規模の大きさになっていること

「それだけ?」と思うかもですが、意味するところはかなり深いです。

専業投資家であること

個人が副業的に暗号資産投資を行っているパターンの「本業+暗号資産投資家」である場合は、暗号資産は雑所得のままです。まず事業所得としては認められません。本業があって、暗号資産もそこそこ手を出している(大きく儲けている)という個人のケースになります。

すでに、「暗号資産専業投資家」である場合、つまり暗号資産の売買だけでメシを食っていると言える人は、認められる可能性があります。暗号資産で生計を立てていることが最大の説得ポイントです。

また、自称「暗号資産専業投資家」であって生計を立てていたとしても、毎日一食カップラーメンだけ、なんとか食べていくのが精一杯というようなレベルの「取引の規模が小さい」人は、これもまず税務署から「事業取得扱い」を否認されます。どれくらいの規模で暗号資産を動かしている必要があるかといえば、明確な基準はありませんが「約一億円」が目安です。

数千万円規模でも、大きく利益を出しているなら認められるかもしれません(数千万単位の利益を出しているなど)。

基本的には、大多数の暗号資産投資家には認められません。仮にテレビに出て暗号資産のことをバリバリ話していて、世間が「暗号資産専業投資家」と認知している人であるとしても、テレビの出演料が主な収入源とみなされれば、「暗号資産の事業所得扱い」は認めてもらえません。

余談ですが、個人「株式専業投資家」というのも、大半は税務署で否認されます。税務署としては「投資」は事業には当たらないとする考え方がきわめて普通だからです。

【結論Ⅰ】個人事業主が暗号資産を事業所得することはあきらめるべし

理屈の上からでは、暗号資産を事業所得として認めてもらうことは可能です。 しかし、「暗号資産専業投資家」だろうが何だろうが、税務署としてはまず疑わざるを得ないので、高確率で「税務調査」が行われます。

税務調査が行われれば、今までオマケしてもらっていた部分も、修正申告を余儀なくされ、本末転倒になりかねません。

【結論Ⅱ】暗号資産を事業所得にしたいなら、自分で法人を作るべし

ここまでで、個人「暗号資産専業投資家」で十分通用し、投資金額も一億円以上あり、しかも、暗号資産を事業所得にしたい人向けのアドバイスです。

法人を設立し、その法人の事業として暗号資産を取引するようにします。そうすれば、税務署にも文句なく認めてもらえます。

もちろん法人税その他もろもろは、実態は暗号資産専業投資家が法人格を持っただけであっても、支払う必要があります。

このことからわかるように、事業規模が小さい個人暗号資産専業投資家がわざわざ法人を設立しても、経費がかさみ結局は損になります。「暗号資産を事業所得にしたい」だけの目的で、法人設立するのは本末転倒で、バカ高い税金を逆に収めることになります。

規模の小さい人は、雑所得で行きましょう。それが一番無難です。

【オマケ】海外の暗号資産取引所を使えば、日本での税金の申告は不要?

海外の暗号資産取引所を使えば、日本での税金の申告は不要?

絶対に必要です

「海外の暗号資産取引所を使えば、日本での税金の申告は不要?」 という話をよく耳にします。

結論から言いますと、「絶対に必要です

日本に居住している人は、絶対に日本での申告しなくてはいけません。

おそらくですが、「海外の暗号資産取引所で作った口座は、日本の税務署では把握できないので、税金の申告しなくてもわからない」 という意味のことを言いたいのかもしれません。

当たり前ですが、そんなに甘くありません。

日本国は租税条約を主要国と結んでおり、海外の税務当局と情報交換ができます。 ホントに小金程度なら、税務署も相手にしないかもしれませんが、億単位のお金(場合によっては何千万円程度でも)になると、見逃してくれませんので、注意してください。

例外的にばれないだろうと思われるケースは、現金を袋に詰めて、飛行機で米国あたりまで行く(税関でバレなかったことが前提)。現地でパスポートを使って暗号資産取引所の口座を作る。日本からの送金は一切せず、持ち込んだお金だけを預金する。

日本に帰国して、ネットで(VPN使うのも良し)外国に作った取引所を使い暗号資産の取引をする。日本の口座に対して一切送金などやりとりはしない。

資産を使うときは、渡米して暗号資産を現地で引き出す。資産を現地で使う。

このような、チマチマしたアナログ的やり方なら(もちろん合法的にやること)、税務署は把握が面倒(手作業と電話確認など人員が必要)ですので調査を後回しにしてくれるかもしれません。

まだ価格が安定していない、新規登場の暗号資産は、数年後何百倍になることもあり得るので、数万円の取引が、数年後には億単位の取引をしていたということはありえます。

ただ、日本が租税条約に基づいて相手国(取引所)に、情報提供を求めたら、相手国は確実に応じますので、そこからは大事故が起きることにはなります。

  1. 平成30年(2018年)度の税制改正で、2020年分以後の個人事業主の青色申告では、55万円または10万円が基本となり、一定条件を満たした方のみ65万円の控除が受けられるようになります。