仮想通貨まわりの日本の規制を知るべし
予習ポイント
- 仮想通貨の規制
- 仮想通貨に対する政府の対応
そもそも規制って何?
仮想通貨の規制を調べる前に、そもそも規制とは何かについて考えてみる必要があります。
規制とは、規律を保つためのコントロールであり、多くは新産業や新テクノロジーと誕生とともに議論になりがちです。
仮想通貨規制はなぜ急がれる?
ビットコインは2009年に誕生し、仮想通貨の先駆けになっています。
その後、マウント・ゴックス事件などが話題を呼び、2014年頃から世界的に仮想通貨が認知されはじめ、同時に規制対象として議論され始めるようになりました。
仮想通貨業としてみれば、その他の規制産業と比べて歴史が浅すぎる業界です。
普通であれば、歴史の浅い業界は、規制が入るまで野放し状態が長く続くものですが、仮想通貨は「通貨」を名乗ってしまったために、素早く規制が入りました。
他の新技術や新産業よりも優先度が高く厳しい規制が整備され続けています。
日本初の仮想通貨法からみる規制
仮想通貨を対象とした法律を世界で初めて施行したのは日本です。
それが、2017年4月の改正資金決済法(仮想通貨法)です。
世界各国で、日本にならうように仮想通貨に関する法制定がなされ、数年も待たずに大まかな規制が整備されました。
仮想通貨の規制はどう決まるの?
仮想通貨の規制はどう決められるかを知れば、もちろん適切な投資判断の助けになります。 行政が規制を整備し、産業界は規制されます。その中で、その規制を遵守しつつ、稼ごうという投資家という立場があります。
予習ポイント
- 仮想通貨に対する規制の決まり方
- 仮想通貨の規制を担当する行政
仮想通貨に対する規制は、世界各国で異なります。
海外における仮想通貨の規制傾向
国 | 仮想通貨取引 |
---|---|
アメリカ | 取引はおおむね容認 |
ドイツ | 課税が減免など |
フランス | 先物取引が規制対象 |
日本 | 容認・適宜規制 |
タイ | 容認・適宜規制 |
台湾 | 容認・適宜規制 |
韓国 | 容認・適宜規制 |
インド | ほぼ容認 |
中国 | 全面的に禁止 |
ロシア | 規制強化 |
南米 | 未整備 |
アフリカ | 未整備 |
気になるのはロシアと中国です。中国は将来、デジタル人民元での国家主導での支配が狙いなので、コントロールできない他の仮想通貨は規制対象になります。 ロシアは仮想通貨の取り扱いについて強い規制を打ちしていましたが、徐々に軟化しています。現在はマイニング等に関しては認められていて、それといった規制がないように見えます。
日本の規制はどこが担当する?
仮想通貨は「通貨」を名乗っているため、内閣府直属の金融庁によって規制が整備されます。
同時に、決済や所得に対する税金に関係して、財務省直属の国税庁の管轄です。
日本の規制はどう行われてきた?
予習ポイント
- G7エルマウサミットとFATFからの通達
- 改正資金決済法について
- 日本の仮想通貨に関する税金
G7 と金融活動作業部会で何が決められたか?
年/月 | 内容 |
---|---|
2015年6月8日 | G7エルマウサミットで仮想通貨に関する議論 |
2015年6月26日 | FATF(金融活動作業部会)にて本人確認を義務付け |
2015年の G7 エルマウサミット開催直後、世界各国の仮想通貨取引所に対し登録・免許制にすること、同時に利用者の本人確認義務付けが確認されています。 これらが、金融活動作業部会(FATF)より正式に通達されました。つまり、ほぼ強制的に各国は関わる法整備が求められることになります。
改正資金決済法が動き出す!
世界中で仮想通貨絡みの規制の整備が本格化し、日本でも「資金決済法」の改正が動き出します。
年/月 | 法施行・改正 |
---|---|
2016年5月25日 | 改正資金決済法成立 |
2017年4月1日 | 改正資金決済法施行 |
2019年5月31日 | 改正資金決済法 |
2019年5月31日 | 金融商品取引法改正 |
2017年には改正資金決済法が施行されます。 改正とあるように、資金決済法を改めたものですが、ポイントは仮想通貨(暗号資産)についてしっかり定義されているところです。
この仮想通貨(暗号資産)について書き加えられた部分を、通称「仮想通貨法」と呼ぶことがあります。
2019年には、さらに改正資金決済法が再度改正され、顧客の仮想通貨を預かる形で管理するだけであっても、改正資金決済法と改正金融商品取引法の規制対象になりました。
つまり、ウォレット事業者が規制の対象となったわけです。
顧客の仮想通貨を預かる形で管理というのは、顧客の秘密鍵を預かっているということです。 顧客の秘密鍵を預かっていない場合は、顧客の仮想通貨を管理しているとはいえず、規制の対象にはなりません。
2019年5月以降は、これまで一般的に仮想通貨と呼んできたものを「暗号資産」という表現に改められています。ただし、本サイトでは、仮想通貨、暗号資産、暗号通貨など、これらの表現を厳密に区別せずに同義語として使用しています。 暗号資産とわざわざ表現している個所は、法律上の文言に合わせて、読みやすくしているという意図があります。
仮想通貨を規制する法律
- 改正資金決済法
- 改正金融商品取引法
これまでの仮想通貨の税金はどうだった?
年/月 | 消費税 | 所得税 |
---|---|---|
2014年2月 | 課税対象 | ? |
2017年4月 | 課税対象 | 課税対象 |
2017年7月 | 非課税対象 | 課税対象 |
現在のところ、仮想通貨は消費税については非課税ですが、所得税の課税対象になっています。
「仮想通貨法」を要点をおさえる
改正資金決済法(仮想通貨法)を理解しておくことで、仮想通貨に関する規制のおおよそを把握することができます。
一見難しそうですが、仮想通貨に関する法律はまだまだ未開拓です。 学習するといっても、難しい内容は一切ありません、
予習ポイント
- 改正資金決済法の詳細
- 仮想通貨の定義
- 仮想通貨交換業の免許
改正資金決済法で整備された内容は「仮想通貨の定義」と「仮想通貨交換業の免許」です。 着目するのは「何をするのに法律の根拠が必要か?」という点です。
仮想通貨の定義、ポイント3つ!
仮想通貨の定義は改正資金決済法2条5項及び6項に、主に3つのポイントで定められています。
5 この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3項に規定する電子記録移転権利を表示するものを除く。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
6 この法律において「通貨建資産」とは、本邦通貨若しくは外国通貨をもって表示され、又は本邦通貨若しくは外国通貨をもって債務の履行、払戻しその他これらに準ずるもの(以下この項において「債務の履行等」という。)が行われることとされている資産をいう。この場合において、通貨建資産をもって債務の履行等が行われることとされている資産は、通貨建資産とみなす。
電子マネーやポイントサービスと仮想通貨の違い
- デジタル空間に存在し、あらゆる商品・サービスの代価として使用できるものかどうか
- それ自体を不特定の他者と交換できるものかどうか
国債や企業の発行する債券と仮想通貨の違い
- あらゆる法定通貨で価値を示すことができるかどうか
- 法定通貨で債務の履行などが可能かどうか
仮想通貨交換業の免許とはどんなものか?
改正資金決済法で整備された内容で着目すべきは、仮想通貨交換業(暗号資産交換業)の登録免許制が採用されたことです。
仮想通貨と法定通貨の交換を行うためには、金融庁への登録が必要になりました。
改正資金決済法2条7項に、仮想通貨の交換業(暗号資産交換業)とは法律上何を意味するかが書かれています。
7 この法律において「暗号資産交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「暗号資産の交換等」とは、第一号及び第二号に掲げる行為をいい、「暗号資産の管理」とは、第四号に掲げる行為をいう。
一 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換
二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。
四 他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)。
仮想通貨の交換業にあたるもの
- 仮想通貨の売買・交換すること
- 仮想通貨の売買・交換を取次・代理すること
- 仮想通貨の売買・交換で、代金を預かること
- 他人の仮想通貨の秘密鍵を管理すること
仮想通貨にかかる税金はどうなる?
仮想通貨にかかる税金に少しややこしくなります。 仮想通貨ビジネスを行わない個人の方々でも、仮想通貨取引の際などに発生する税金については必ず理解しておく必要があります。
主に、「消費税」と「所得税」の二つになるため、しっかり学習していきましょう。
予習ポイント
- 仮想通貨の消費税
- 仮想通貨の所得税
仮想通貨は消費税の課税対象になるのか?
かつての仮想通貨は、通貨と名乗ってはいてもゲームセンターの遊戯コイン扱いでしたので、消費税の課税対象にされていました。
ところが、改正資金決済法(2017年4月)の施行、2017年度の税制改革により消費税法施行令が改正され、仮想通貨の譲渡に対する消費税の非課税化が決定されました。
仮想通貨にかかる所得税はどうなる?
改正資金決済法の施行により、仮想通貨取引に対する所得税の課税化が明確になりました。
原則として雑所得となる旨が記載されています。しかし、仮想通貨を事業としている場合には事業所得となるため注意が必要です。
雑所得は、事業によって得たものではない所得とみなされる利益のことです。 雑所得については他の損失と差し引いたり、次年度へ繰り越すことができません。 同じ雑所得に該当するものとしては、株やFXなどの金融取引があります。
また、仮想通貨は総合課税の対象になるため、他の総合課税の所得(配当所得や不動産所得、事業所得、給与所得など)と合算となり、超過累進税率が適用されます。
なお、タックスアンサー上ではビットコインと記載されていますが、アルトコインを含む全ての仮想通貨が対象となります。
これには、アルトコイン同士の交換なども含まれているだけでなく、マイニングによって得た利益も課税対象となっています。